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静かな部屋の中に
彼に取り付けられた
機材の音だけが響いていて…。
心で何度も何度も彼を呼んだ。
聖…
聖っ…
…私を置いて行かないで。
もう一度その瞳を開いて
私を抱きしめて。
たとえ愛してくれなくても
いいから…。
もう一度だけ…。
堪えきれずに
瞼からこぼれた涙が
彼の手にポトリと落ちた時。
ピクリと動いた
彼の手が微かに
私の手を握り返した。
「聖っ…」
思わず彼の名を呼ぶ。
けれど彼の瞼が
持ちあがる気配はなく、
不安だけが大きくなって行く。
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