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その日も彼女は不自然なほど自然に振る舞っていた―――。
俺が初めて彼女、佐々木千歳に会ったのは10日ほど前、お互い会社の担当者として顔合わせをした時だった。
「初めまして。この度木漏陽カフェ様の担当をさせていただくことになりました、佐々木千歳と申します。よろしくお願いします」
快活に彼女は挨拶するとピシッとした角度で頭を下げた。
女が担当者だと聞いていた俺は、彼女の様子を見て、不満を納得に変えた。
(まぁ、仕事にはなるかな)と本人に聞かれたら殺されそうな失礼なことを心の中で呟きつつ、俺も頭を下げた。
「こちらこそお世話になります。菊池海です」
お互い、名刺を交換したところでソファーに向かい合って座った。
ジッと彼女の観察をしてみる。
今時の女には珍しい、染められていない黒く艶やかな長髪をポニーテールにし、
切り揃えられた前髪から覗くのは意思の強そうな一重の瞳。
化粧はほとんどしておらず、年は俺より2つ3つ下か。
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