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俺に聞こえていたのだ。
彼女に聞こえていないはずがなかった。
彼女は別にショックで涙も出ないのでもなく、別に泣くのを我慢してるのでもなく、ただ何事もなかったかのような顔をしていた。
――普通泣くよな?泣かなくても逆に強がるとか。
は?え?待て。
全然理解できない。
俺は一人混乱していた。
当の本人は心配しているこちらが馬鹿らしくなるほど平然としている。
すると、彼女は未だに混乱して立ち止まっている俺を振り返り、
「どうかされましたか?」
とのたまった。
しかも真顔で、だ。
いやいや、どうかされてるのはアナタです
いっそ言ってやろうと思ったが、そこは、大人、俺も何事もなかったかのように振る舞った。
「あ、すいません。何でもありません。」
すぐに足を踏み出し彼女の隣に並ぶ。
「?」
彼女が首を傾げて見上げてくる。
が、そこは彼女を見習い、気付かないふりをした。
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