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○●○●○ 勢いはなくなったものの、雪は今も降り続いている。 私も高梨君も傘なんて持ち合わせてなくて、稽古着の上からコートを羽織り、マフラーで首元をグルグルと巻いた。 「斎藤君、無事に帰れたかな?」 「いっそのこと、皆で朝まで稽古なんてのも良かったかもね。」 「ふふ。美月さんの嫌そうな顔が目に浮かぶ。」 「たまにはさ、青春って感じも楽しいと思うんだけどな。」 高梨君の半歩後ろを歩きながら、みぞれ状に解けた雪の感触を靴底で楽しむ。 睫毛にかかった雪を人差し指で払っていると、差し出された雪の塊。 「ポストの上に積もってた。まっさらな雪。」 私の手のひらに移ってきたそれは、触れた部分からじわじわと解けだして指の隙間を伝っていく。 冷たい筈なのに、その汚れない白さに惹かれて目が離せない。 .
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