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「斎藤に誘われてここの芝居見に来た時に、良い話書く人が居るんだなって思って。」 「……だから『空想旅団』の話を断って、うちのオーディション受けたの?」 そう尋ねると、高梨君は驚いた表情で私を見返した。 「……もしかして、斎藤?」 「うん、オーディションの日にチラッと聞いただけだけど。」 う~んと唸りながら天を仰ぐ彼が、腕組みして黙り込む。 「……触れちゃいけない話だった?」 「そうじゃないんだけど……。今の良い話が台無しになる。」 難しい顔のまま、片目だけを開いてこちらを見た高梨君は、溜め息を吐いた。 「…………ほら、あんな大きな劇団に入ったら、良い役回って来ないだろ?やっぱり出番は多い方がやりがいあるし。」 「あはは。言ってることとやってることが全然違うじゃない。先生しっかりしてよ。」 格好つけていた高梨君を思い出して笑い転げていると、つられた彼も満面の笑みを浮かべた。 「フウちゃんが、そんなに笑ってくれるなら、不甲斐ない先生役も悪くない。」 .
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