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「……さっきの話なんだけど。」
息を整えながら口を開いた高梨君は、降りしきる雪も構わずに空を見上げた。
「どうして『空想旅団』の話を断ったのかっていう。」
「うん。」
「……本当はさ、ちょっと違うんだ。」
彼の見上げた先を追えば、放射状に落ちてくる雪の粒が次々と頬に着地する。
「芝居さえ続けていれば、いつかフウちゃんに会えるんじゃないかって思ってた。」
「……うん。」
「『空想旅団』に惹かれなかった訳じゃない。
だけど、俺はもう一度フウちゃんと芝居がしたかったんだ。」
目にかかる雪が億劫で、そっと目を閉じてみる。
優しく降り積もる雪と、どこか心地良い高梨君の声。
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