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「……ラーメン。」
「へっ?!」
「ラーメン食べたくなっちゃった。」
目を合わせるのは恥ずかしくて、降る雪を追い掛ける振りをして足元に視線を落とす。
「……ラーメン屋まで、結構距離なかった?」
「そうだね。」
氷のように冷たいその手。
遠慮がちに指を絡めると、ギュッと握り返してくれた彼に口元が緩む。
「オッケー。徹夜稽古に備え、ニンニクたっぷりでスタミナつけるか。」
「臭いし。」
「フウちゃんも食べれば大丈夫!」
繋いだ手のぎこちない距離感にさえも嬉しさが募る程、高梨君を好きになっていく。
高揚感に寒さを忘れて。
少しでも長くこの手を繋いでいられるように、ゆっくりと雪を踏み締めた。
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