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「……待って、お父さん。」
「ぶっ!それ、どんな芝居だったの?」
「ちょっ……、笑わないでよ!」
お腹を押さえて身体を捩る高梨君は、必死に笑いを堪えて目尻の涙を拭っている。
「もう特別レッスンは結構です!」
「ごめんごめん。いかにも児童劇団でやりそうな感じにハマっちゃったんだよ。」
「……そうなの。今思えばベタでクサい芝居なんだよね。
でも台詞のニュアンスが掴めなくて、何回もダメ出しをもらって、泣きそうになりながら練習を重ねたのに……。」
「上手く出来なかったんだ?」
「練習通りどころか声すら出てなくて、凄く悔しかったの。」
「……そんなもんだよね。」
遠い目をした高梨君が苦笑する。
「初めて貰えた台詞の嬉しさと、上手く演じ切れなかった悔しさが次に繋がってく。」
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