相合傘

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 「そう言う事でしたら、早く手を打ちましょう」  善は急げ。  悪は猶急げとばかりに、私は、従業員達をまくし立てますが、  皆、濡れるのは、どうも気が引ける。  相手は奇麗事や戯れ言を瞬時に見抜く、あのサトリ様、第一、見つけたとして如何声を掛けるおつもか?  と後向な発言ばかり。  私も元が猫故、雨露で毛が湿るのは厭で御座いますし、どうサトリ様にお声をお掛けするべきか、  皆目見当が付きません。  それでも、私はサトリ様に、傘をお返ししたい。 娘との恋路をどうにか取り持ちたいと切に願うので御座いますが、  私に出来る事は、  ウブメ様の如く、美しい翼で宙を舞えたなら、サトリ様の居場所も一目瞭然で御座いましょう。  雪女郎様の様に吹雪が降らせれば、サトリ様も、寒い寒いと暖を取りに戻られるかも知れませんが、  見た物に、変化する事のみ。
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