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或雨の晩の事、
私共、伏魔ご殿の従業員は、お客様の残飯で、賄料理をこさえ、飢えと渇きを凌いでますが、
其れでも、
下山した先の都会で、廃棄された塵袋の塵より美味なので、好んで食すので御座います。
食事中、
従業員の一匹が、ふと、想い出したかの如く、こんな話を持ち掛けて参りました。
「傘を玄関に、お忘れになられたお客様がいる。
確かサトリと言うお客様の傘で、
修繕の継接が彼方此方に見られる、蛇の目模様の、朱い唐傘、
余程、愛着のある品物とお見受け致しますが、其れをお忘れに為るとはどう言う事でしょう?」
問われましても、
傘をお忘れあそばされた、理由や経緯に付きましては、サトリ様と其の唐傘にしか判りません。
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