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【ニ】
傘に九十九神が宿ったので、私共は、「サトリ様が何故、貴方をお忘れになられたのか」と訊ねます。
すると傘は蛇の目を大きく見開き、
「厭々、私にはとてもお話し出来ません」
「何故ですか?」
「サトリ様には、知られたくない事なのです」
悟様には、抜き差しならない事由があった様で御座いますが、この様子だと、頼みの傘も黙秘を強要されている模様。
「他言は致しません」
「されては困ります」
「聞かぬ存ぜぬの、猫を被りますので、どうかお聞かせ願えませんか?」
唐傘は帆に皺を寄せ、ううむと唸ると、
「先程の言葉、然と守って下さいますか?」
「勿論の事です」
「ならば、お話し致しましょう、サトリ様に何があったのか――」
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