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サトリ様には好いた娘がいらっしゃった様で御座いまして、誠に失礼ですが、サトリ様の、猿の様な容貌とは雲泥の差の、
それはそれは、美しい娘だったそうで御座います。
とは申しましても、驚嘆すべきは、二人の容貌より、その娘が人間の女だと云う点で御座います。
ですから、
ヤマコ(山野に棲む男妖で、雄しかおらず、繁殖の為に人間の女を攫う)が、手を掛ける事をサトリ様は酷く懸念されたのかも知れません。
事実、ヤマコは伏魔ご殿の女性客や従業員に卑猥な行為を行う輩ですので、入館を固くお断りしておりますが、
娘は、どうやら、登山中に親御とはぐれ、傘を転がして、山道で泣いておったそうなので、
可哀想にと、麓迄、共に登山してやったと云う事の様に御座いますが、
不思議にも、
娘は、猿の様なサトリ様を見ても、
驚きも泣きも、しなかったそうで御座います。
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