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それからと言う物、サトリ様は、雨の日に傘を差して山の麓に降り、
娘と色々なお話しに興じていたそうで御座います。
反面、自らが妖である事と、娘が人の娘である事に大層悩んでおられ、
「妖と人が、
結ばれる事は、山神の掟に反する事は重々承知してはいる、それでも僕は、あの娘の事がどうしても忘れられない…、
彼の娘が“好きだ”と胸の内を聞かせてくれたので、尚更だ」
と、思案を巡らせては、溜息を吐いてばかりの様で御座いましたが、ふいに何かを思い立ったかの様に、
この旅館に足を運んだ。
と言うのが、傘をお忘れに為る迄の経緯の様で御座います。
サトリ様は、何を為さるつもりなのでしょうか?
自らの宿命を呪い、山中で自害為さるつもりなのか、それとも、娘を探しに下山為されたのか?
穏やかでは御座いません。
これは、最早、一刻を争う事態ではないでしょうか?
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