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ユノアの手馴れた手つきにやはり先生だなと徹平は感心した。
痛い部分はやはり痛いのだが、自分でやるよりも遥かに痛みは少ない。美人の養護教諭に処置を受けているからだろうか、などとくだらないことだって考えることが出来る。
そんなことを考えていると、徹平はふとアスカの言葉を思い出した。まるでユウカの事を知っているような口ぶりだった。いや、あれは知っているなんてものじゃなかった気がする。
治療を受けながら、徹平は疑問をアスカに投げかけた。
「そういえばリューネさん。さっき神楽坂さんの事を知ってるような口ぶりでしたけど、お知り合いなんですか?」
そう聞いた瞬間、アスカとユノアの手が止まった。
徹平にしてみればなんとなく気になったことを聞いただけだ。だというのに、和気藹々としていた空気が固まってしまった。
どうしたものかと戸惑っていると、ユノアが小さく息を吐いた。
「えーっと、君、名前なんだっけ?」
「あ、水橋徹平です」
「うん。水橋くん、教えてあげてもいいけど水橋くんだけの秘密に出来るかな? ちょっと表沙汰になると色々面倒なことだからさ」
ユノアは優しげに笑みを浮かべてみせるが、その目は全く笑っていなかった。冷たい光を宿し、徹平の事を鋭く射抜いている。
その威圧感に気圧され、一瞬だけ徹平は頷くことを戸惑ったがすぐに覚悟を決めて首を縦に振った。
「……そっか。じゃあ、アスカとユウカ、それから私の関係を教えてあげる。結論から言うとね、ユウカはアスカの娘。私から見たら姪っ子ね。あ、ちなみにアスカは私のお義姉ちゃん」
徹平は今の説明を頭の中で整理する。
確かに、自分が務める学校に近親者がいたら色々面倒なのだろう。しかし、こんな若い人がユウカのような子供を産んでいたとは驚きである。もしかして見た目が若いだけで実際はそれなりに年齢が相応なのでは無いだろうか。
そんな事を考えてると、徹平は唐突に一つの事を思い出した。
神楽坂ユウカが誰の娘であるかを。
「え? あの、リューネさんは、神楽坂さんのお母様……なんですよね?」
「ええ。ただ、今は訳あって別居してるけど……」
「え? あの、神楽坂さんのお父様って確か……」
徹平がそう言った瞬間、ユノアとアスカは徹平が何に戸惑っていたのか気づいた。
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