英雄の娘

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「ん。そうだよ。ユウカの父親は君の知ってる通りだよ」  それを聞いた瞬間、徹平は驚きのあまり椅子から転げ落ちた。 「な、ななっ!? そ、それじゃあ、クロス先生とリューネさんは……英雄のご家族!? あ、あの、英雄、神楽坂悠季の奥様と実妹なんですか!? え? あれ? でも、あれ? 苗字とか? あれ?」  目を白黒させる徹平を見て、ユノアは小さくクスリと笑みをこぼした。 「苗字が違うのは当然だよ。アスカはユウキと結婚してないし、私はユウキの本当の妹じゃないから。言うなれば、アスカは内縁の妻で私は義理の妹かな」  その言葉を聞いて混乱していた徹平の頭は徐々に落ち着きを取り戻していった。  なるほど。そうか。それなら苗字が違うのも納得がいくよな。  そう結論付け、徹平は何度か大きく深呼吸をした。 「えーと、あの――」  どうして別居をしているんですか?  そう聞こうとして徹平は聞くのを止めた。さっきのアスカの悲しそうな顔を思い出し、さすがにここまで踏み込むべきでは無いと判断した。  その様子を読み取ったのかユノアは小さく笑みを浮かべると徹平に座りなおすように促した。 「それじゃ、手当ての続きをしようかしら。今ので治療しなきゃいけない場所が増えただろうし」 「アハハ……すみません」  申し訳なさそうに徹平は笑うと椅子に座りなおし、大人しく治療の続きを受け始めた。  治療が終わると徹平は夕食をご馳走になり、帰路へと着いた。  ユノアが途中まで送ると申し出たが、理由があれどさすがに教師と生徒が夜遅くにいるのは不味いと徹平は断った。  翌日、学校で会ったユウカは特別変わった様子は無かった。昨日のあの後のことを言及されるわけでもなく、ただ淡々といつも通りの日常が過ぎていった。  昼休み。教室をそそくさと出て行くユウカの後を、徹平は深雪の制止の声も聞かずにすぐに追った。 「か、神楽坂さん!」  徹平の声に廊下にいた生徒の多くが徹平とユウカの事を振り返った。  徹平の声が聞こえただろうにも関わらず、ユウカは歩みを止めずに先を進み続ける。 「ま、待ってよ、神楽坂さん!」  徹平がユウカの腕を掴むとようやくユウカは歩みを止めた。
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