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暴こうとした生徒は恐ろしい程に模範的な生徒になっていた。しかも、ユウカの名前を聞くと震え上がってヒステリーを起こしかけるようになっていた。
だというのに、目の前の友人は何事も無かったようにユウカの居場所を知っているというのだ。とてもじゃないが信じられたものでは無い。無いのだが、深雪が嘘を交渉材料に使うとも思えない。
徹平はどう判断したら良いものか、思い悩んだ。それはもう学校の廊下だというのにうなり声を上げるほどに悩んだ。
そして、決断した。
「ポイント、ちゃんと教えてくれよな」
途端、深雪の顔が喜びで破顔した。
「サンキュー! お前ならそう言ってくれると思ったぜ。さすが我が親友。欲望に忠実だ!!」
「バ、バカ! 大声でなに言ってんだよ!!」
「え? 秘蔵写真いらないの?」
「いる」
電光石火の回答だった。徹平の答えを聞いた深雪は悪どい笑みを浮かべている。
計画通り。どうせそんなことを考えているのだろう。
しかし、秘蔵写真か。秘蔵写真というほどなのだから、よほど普段では撮れないような物なのだろう。だが、あのユウカの写真というだけでも徹平は同じ答えを返していただろう。
なにせ、あの神楽坂ユウカの写真なのだ。徹平が仄かにだが好意を寄せているユウカの写真なのだ。
だが、好意を寄せているのは徹平だけではない。なにせ、あの容姿で男勝りな性格だ。異性としての好意でなくとも、憧れに似た好意を抱いてる人間はそれなりにいる。
しかし、先の教室の様子からも分かるように敬遠している人間の方が大多数なのも事実だ。
(秘蔵写真か……)
徹平の頭の中で様々なシチュエーションの写真が浮かんでは消えていく。
あのユウカが満面の笑みを浮かべているシャシンだろうか。それとも、コスプレとかしてる写真だろうか。それとも、水着姿の写真だろうか。はたまたそれとも--
「んー? てっぺいくーん、お顔が真っ赤ですよー。何を考えたのかなー?」
「何も考えてないよ!?」
徹平は慌てて頭に浮かんだ白昼夢を振り払う。あり得ない。あのユウカがそんな事をしているはずが無いだろう。
残った妄想を追い出すように徹平は本屋に向かう足を早めた。
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