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冒頭
金糸ような髪を泥で汚し、その女神のようにも見える顔立ちには赤い筋が幾つか走り、そして身の丈に合わない大剣を地面に突き刺し死の瞬間を待つことしか出来ない自身を屈辱と羞恥で辱めていた
「聖剣使いもその程度か」
そんな彼女の前に黒衣の騎士が少しずつ迫っていた
迫り来る『死』というものに初めて遭遇する彼女の心は少しずつ恐怖に支配されつつあった
―――誰でもいいから助けて
彼女の心は叫んだ
「どうだ命乞いをするか?」
だが、黒衣の言葉で彼女の心はあるものを取り戻した
「いや、私は聖剣を担う騎士だ。だから、死など恐れない」
「そうか」
黒衣の剣が彼女の首を狙う
だが、彼女の心は達観と安堵が広がっていた
だが次の瞬間
「へぶっ!?」
黒衣の顔面に鞄のような物が衝突していた
「貴様………!」
黒衣は気絶する瞬間自身に鞄の飛んできた方向を睨み付けた
詰襟のボタンを全て外し隙間から赤いインナーシャツが見えていた
別に対したことはない、何処にでもいる学生だ
「ふざけんな」
学生は震えていた
そして、顔を怒りで赤く染めていた
「そんな物の為にテメェが死んだら、テメェの為に泣いてくれる人にどう示しをつけるんだよ!馬鹿野郎!」
青年は気付けばそう叫んでいた
そして、これが彼と彼女の始まりだった
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