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「香ー、早く起きなさーい!」
「…んー…あと10分…」
呟くように言って布団に潜り込む。
5分もすれば妹が起こしに来るだろう。
それまでの5分は、全て妄想に使う。
片想い中の先輩といちゃいちゃする妄想だ。
今日は遊園地にしようかな。
コーヒーカップ乗って、ジェットコースター乗って、私の手作りのお弁当を食べてもらって…。
「お姉ちゃ~ん、学校遅刻するよー!」
「…はいはい」
ちっ。
今いいところだったのにぃ!
私は妹を部屋から追い出し、着替えを済ませた。
自室のある2階から降り、1階で顔を洗う。
ついでに歯を磨く。
ギリギリまで寝てるお陰で、朝食はいつも学校に着いてからだ。
「行ってきまーす!」
ダッシュで学校に向かう。
私は陸上部に所属しているので、脚力にはそこそこ自信がある。
だからこそギリギリまで寝ていられるのだ。
角を曲がったところでどん!という鈍い音と共に誰かにぶつかった。
「大丈夫ですか?」
私の頭は痛みで多少クラクラしていたが、相手の言っていることは理解できた。
「はい…ってや…や、柳山先輩?!」
「永門?…ちゃんと前見ろよ…」
はぁ…と、呆れたような溜息をつく柳山先輩。
「すみませんっっ!」
よりによって大好きな柳山先輩なんて…!
「何ぼーっとしてんの?さっさと立つ!」
そんな事を考えていたら、先輩に軽く怒られてしまった。
「は、はい!」
私は立ち上がり、ついでに近くの公園の時計を見た。
時刻は8時5分。のんびり歩く余裕など全くない。
「行くぞ!」
先輩は私の手を引いて走りだした。
…って手を?!
どきどきし過ぎで心臓破れそう…!
「もっと速く走れねーの?!お前も陸上部だろ?!」
「む、無茶言わないでくださいよー!」
陸上部エースとこの春から陸上競技を始めた新入部員じゃ、スピードの差は歴然としている。
しかし、学校には予鈴5分前でなんとか間に合った。
「ありがとうございましたっ」
お礼を言って教室に向かおうとしたところで、柳山先輩は私に耳打ちした。
「今日の放課後…話がある。部室で待っててくれ」
「はいっ」
話ってなんだろう…?
「じゃ、またな」
先輩はそれだけ言うと、自分の校舎へ走って行った。
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