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「最近、香織ちゃん来ないね」
事情を知らない常連はそう話し、知っている者の間では香織の事がタブーになった
香織の姿を見かけなくなってから一月程が経つ
声が聞きたい、そう思うと次に肌に触れたくなる
これだけ誰かを恋しいと思うのは、初めてだった。何度も電話をかけそうになる、その度に無理矢理自分の感情を押し殺す
香織の事を考えなくて済むのは、茜といる時だけだった。日々、母親になる自覚を身につけてゆく茜。比べて私には実感すらない
それでも、変わってゆく茜を見ていると微笑ましい気分になる
穏やかな愛情と激しい愛。ずるい事はわかっていても、両方が欲しかった
香織はどうしているのだろうか?
もしかすると、案外気持ちにキリをつけていて全てが過去の事になっているのかも知れない
それはきっと正しい事なのだろう。だが正直私には耐えられない想像でもあった
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