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店の電話が鳴ったのは、零時を回った頃だった
「もしもし」
「……………。」
電話の向こうから声は聞こえない。それでも私には誰だかわかっていた
カウンターでは、お客同士がたわいない会話を続けている。電話をしている私には誰も興味を示していない
無言の電話を続けた、微かな嗚咽が聞こえ出す
「元気か?」
「ごめんね……」
しゃくりあげる様な声が切ない
「いや、声聞きたかった」
「そんな事初めて言われたよ」
「そうかな…」
もう、誰にけなされようが罵られようがどうでも良かった
ただ会いたくて、抱きしめたくて…
「出られるか?」
「……本当に…良いの?」
「会いたいんだ」
引き返せない泥沼に、束の間の幸せに、私達は足を踏み入れる
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