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一連の茜の仕草には、愛おしさを感じずにはいられない
茜の愛情は、お腹の子供と共に優しいものに変わっているように感じていた
裏切っている…そんな気持ちが込み上げる
「お前さ、本気で香織ちゃん何とかしないとマズいだろ」
子供の頃からの幼馴染で、ちょくちょく店に顔を出してくれる友人は、毎度のようにそう話した
その割に、店では香織とも愉しそうに話をしている。余計なお世話だとは言えない気分だ
彼にしてみれば、只の不謹慎極まりない友人なのだろう
香織はすっかり店の常連として収まっていた。店の客の中には私達の関係を感づいているものも多かったのだろう
けれど、それは誰も口にしない
ある頃から、店の常連の女の子達は、店から帰る時に私とハグする事が普通になっていった
きっかけは良く思い出せない。多分酔っ払った誰かが、帰り際に私に抱きつき、「良いな~」そう言った友人とも同じようにそうしたのだと思う
それが、色々な女の子に広がり、そうして何となく当たり前の帰り際の挨拶になってしまったのだ
勿論、下心はどこにもない
香織もその光景を笑って見ていた
「みんな、どこかで寂しいんだよ」
「香織も寂しいの?」
「どうかな~」
あの時、香織はどんな顔をしていたのだろう。
少なくとも記憶には無かった
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