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着替えを済ませ、控え室を出た。気の早い友人達も集まり始めている
「おお、おめでとう!しかし、似合わんな」
目ざとく私を見つけた友人達に声をかけられる。視線の先に茜が目に入った、着物姿の誰かと話をしている
茜が私に手招きした。その動作に着物の娘がこちらを振り返る、にこやかに私に微笑みを浮かべる
香織だった。アップに纏めた髪、着こなしにも隙がない。子供の頃から日舞をこなし名取だと聞いていたが、着物姿は初めてだ
ウエディングドレス姿の茜、その横に着物の香織。二人が私に微笑んでいる
似合わないタキシード姿の私だけが、この場にそぐわない。不謹慎にも感じたのはそんな事だった
「おめでとうございます」
香織が形通りに頭を下げた
立ち居振舞いの美しさに見とれる。慌てて私も型通り挨拶をした。後ろから友人の声が聞こえた
この場から立ち去りたい気持ちと、二人を見ていたい気持ちが交差する。私は友人の元へ歩んでゆく
二人の視線が重く感じられた
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