愛情 #2

23/23
前へ
/34ページ
次へ
「お~、隆ちゃんいらっしゃいませ」 階下のこの店は、広さは同じでもスタイルがまるで違う。カウンターの内側には大きな鉄板があり、メニューは鉄板で焼くツマミにカクテルの種類も豊富だった 「どう?最近は」 オーダーのビールと共に出てきたのは、そんな言葉だ。水商売で、どう?とくればもちろん売上の事 「ぼちぼちやってますよ、ハコが小さいから相変わらず逃げられますけどね」 「まあ仕方ないよな、でも逃げられるだけ入ってるって事じゃん」 苦笑しながらマスターが答えた 「何言ってんですか、俺からしたら十五年もやってる店のが羨ましいですよ」 「まあ、惰性だよな。大して儲かんないけど、来てくれる客いるしな」 四十少し前だろうか、子供も大きいと聞いていた 「ですね、暇だとへこみますけどね」 「まあ、待ちの商売だからな~」 カウンターの中で、スツールに座りタバコをふかしながら天井を見つめている 「実はさ、ぼちぼち区切りつけようかとか考えるんだよね」 「それって、店閉めるって事ですか?」 「流石にそれは出来ないからさ、誰かにやらせようとかね」 いつ迄も続けられる商売では無い、誰もがわかっている。その後は、当たり障りのない世間話をして店を出た 店の外までマスターが送りに来る 「ああ、そういえばさ~。前に連れて来てくれた女の子、チョクチョク来てくれるよ」 この店に連れて来たのは、茜と香織ぐらいだった。茜の筈は無い、茜と結婚した事ぐらい彼も知っている 「そうですか、うちには最近来て無いですよ。又寄るように言っといて下さいよ」 「ああ、伝えとくよ。でも、隆ちゃんと付き合ってると思ってたんだけどな」 「また~、勘弁してくださいよ。子供も生まれたんですからね」 「まあ、そう言う事にしておくさ。気を付けなよな」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

757人が本棚に入れています
本棚に追加