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兆候 #2
消えてゆく涼子を見て、少し寂しく感じたのは事実だが愉快な気分でもあった
私も、ケジメを付けなければいけないのだろう。そんな事は、初めからわかっていた筈なのだ
香織と出会ってしまってから、もう一年半が過ぎている
「ねえ、香織ってお店に来るの?」
茜の口から香織の名前が出る、唐突で少し慌ててしまった
「たまに来るよ、友達とだけど」
「ふ~ん、そうなんだ」
ドキッとしながら聞き返した。問いかけた茜はあまりに自然だった、私たちの事に気が付いている訳ではないだろう
「香織ちゃんがどうかしたの?」
「どうって訳じゃないんだけどさ。子供の顔見に来るって言ったのにね、中々予定が合わなくって」
今でも、ちょくちょく電話では話しているようだ。香織からも、茜からも聞かされていなかった
香織はどんな気持ちで子供の話を聞いていたのだろう
「まあ良いや、今度来たら隆ちゃんからも遊びに来いって言っといてよ」
出来るだけ気のない素振りで、わかったと答える
さすがに言えるわけも無かった
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