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一年間の約束 #2
『大好きで、大嫌い』その言葉の意味は、香織にしか、分からない感情だろう
身体中から力が抜ける、良い女なんだよな。香織も、そして茜も・・
あまりの情けなさに、涙が出てきそうだった。言葉は続かない、口角を上げて無理矢理に微笑んだ
テーブルの上の灰皿で、吸いもしない煙草から、真っすぐに細い煙が昇ってゆく
冷め切った珈琲を口に運ぶ、もう話す事がない。語る言葉が見つからない、じっと見つめる私に、香織が話しかけた
「お願いがあるの・・・」
真剣な眼差しだった、出来る事ならば何でも受け容れるつもりで、聞き返した
「・・何?」
少し躊躇いながら、香織が口を開いた
「もう、隆ちゃんには会わない。でも、どうしても声だけでも聞きたい」
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