最終章 #2

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「隆君、良く来るんですか?」 細い脚のカクテルグラスを、静かに目の前に滑らせながら、マスターが答えた 「いや~、滅多に来ないよ。営業時間、被ってるからね。半年に一回じゃないかな」 それを聞いて、ほっとした。流石に、此処でばったりなんてバツが悪い それっきり、隆の話はふって来なかった。さり気ない会話をしながら、時間は過ぎる 「マスター、帰ります。又、来ますね」 もう、このビルに足を運ぶ事は無いだろう・・ 「早いね、又、おいでよね」 ドアを開けると、一つ上の階からお客達の声が聞こえた。ちょうどお客が帰るところなのだろう 「またね~マスター」 「ああ、またおいで。待ってるからね」 隆の声、思わず息をのんだ。エレベーターが閉まる音が聞こえる 知っているお客かも知れない。エレベーターのボタンは押してしまっていた 慌てて、非常階段に向けて歩いた。頭上で、コツコツと歩く音が聞こえる カチッと、ライターの音が聞こえて来た。きっと、隆は階段から外を眺めて煙草を吸っている 物音をさせない様に、背中を壁にもたれてみる 「おやすみ~」 頭上から、隆の声がまた聞こえた。帰って行くお客に、上から声をかけたのだ 暫くして、廊下に足音が響いて、カチャリと店のドアが開いた。少しだけ、店のBGMが大きく聞こえて、直後に消えた 私は、静かに非常階段を降りた
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