最終章 #2

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この一年、何度も隆の店の側まで出掛けた。少し離れたビルの二階、ケーキの美味しい喫茶店の窓際の席 隆は、買い物の袋を抱えて五時半に店に入る。開店の準備をして、暫くすると非常階段に姿を表す 白いフェンスに両肘をつけ、通りを眺めながら煙草に火を付ける 表情までは、わからない。それでも、その数分間が見たくて、何度も店に足を運んだ 「バカみたい・・」 隆の姿が消えると、独り言でそう呟いてしまう ある日、気が付いた。もしかして、隆は私に気が付いているのかも知れない それでも、その事を尋ねはしない。聞いた処で何も変わらない ある夜、隆の電話を切った後、眠れずに家の外に出た。話終えて数分だろうか 家のそばに、小さな児童公園がある。真夜中の住宅街、角にに電話BOXがポツンとある その脇に、見慣れた車が停まっていた。グレーのハッチバック 隆の車・・・・ 慌てて隠れた、静かにエンジンがかかる。テールライトが赤く染まって、闇の中に消えた 隆も、同じだった。少しでも近くで話したかったのだろう
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