最終章 #2

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正直に言えば、隆が毎日電話をくれるとは思っていなかった 平日の夜はともかく、日曜日はお店も休みだった。家族と過ごす一日、そんな日は大変そうに思えた 本当に短い電話の時もある、優しい声で『愛してるよ、おやすみ・・』 たった一言でも、嬉しかった。少なくとも、その瞬間の隆は私の事だけを考えてくれている ただそれだけで、救われる気がした。本当は会いたい、会いたくて堪らない 電話の向こうの隆を思い浮かべる、どんな服を着ているのだろうか、微笑んでいるだろうか 受話器越しに、煙草に火を付ける音が聞こえる。煙草を挟んだ指先や、その仕草、繊細な指先・・ 触れる事は出来なくても、目を閉じて話していれば想像が出来た 少しでも、その時間を大切にする為に、どれだけ嫌なことがあっても、出来る限り明るく話をした
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