1.疑惑の侍女

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「……うん…。大丈夫…」 「どうかなさいました?」 扉をノックする音が、何重にもこだました 「お開けしてよろしいですか?」 キィッと音を立てて開く扉 服を着ている間、常にガーターベルトで太股に固定している護身用のダガー お風呂に入っている時には手元に、寝る時は枕の下に忍ばせてる バシャッと音を立てて跳ねるお湯 ソッとダガーを握り締め、扉を見据えた 大きく開け放たれた扉の向こう側に居るエストレジャは、湯気に隠れて曖昧に映っている 「あら……。すごい湯気ですのね」 間延びした声 緊張感の欠片もないけれど、それも作戦のうちかもしれない 「いっつもこんなもんだよ?」 「そうでございますか…。ところで……」 エストレジャの爪先が、湯気の中から現れた へ? はだ…し? 真っ赤に塗られた爪に言葉が出てこない
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