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 17発の祝砲が夏の空の静けさを打ち破り、進駐官養成高校の夏の一大イベントが華々しく開始された。貴賓席(きひんせき)には軍の高官や高級官僚、政治家たちが白い礼服で顔をそろえている。あちこちで扇子(せんす)が蝶のように閃(ひらめ)いていた。日陰でも30度を越える猛暑である。  豪華な貴賓席でひときわ目を引くのが、来賓として出席した皇太女のふたりだった。日乃元(ひのもと)皇国女皇羅子(らこ)さまの長女・璃子(りこ)さまと次女の瑠子(るこ)さまである。皇位継承権はそれぞれ第2位と第3位、このおふたりのどちらかがつぎの女皇の座につくことになる。  璃子さまは飛び抜けた美しさで、国内だけでなく広く世界に名を知られていた。日乃元の女皇には数世代にひとり、その時代の全女性の美の基準となるような美人が生まれるという。璃子さまが当代一であることに疑いをもつ者は宮内省だけでなく、皇民一般にも存在しなかった。それはひと目璃子さまを見れば誰にでも納得できることだ。
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