すべての始まり

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 今日の患者は皆一様にインフルエンザを発症していた。季節的にはおかしくないし、予想していた結果といえる。予防接種によってインフルエンザにかかる確率は下がったとはいえ罹患率はそこまで減っていない現状だ。医者や看護師は前もって予防接種を優先的に受けられるようになっているがゆだんはできないため手洗いうがいはもちろんのことマスクやこまめな手指消毒が義務付けられている。  今年の予防接種は予想型とあっているため罹患率が減ると予想されていたはずだが感覚的に去年よりも多い気がする。むしろこれだけの人がインフルエンザになるのは私が看護師になってから初めてのことであった。  現代の日本において外出の機会が極端に減ってしまっていた。インターネットで頼めば何でも手に入るようになったからだ。もっとも、それによる運動不足を危惧した政府が1日に1度は自分の限界の60%の運動をするように義務付けた。それの実行のために朝のランニングをする人をちらほら見かけるがそれほど多いというわけではない。それに今は冬だ。わざわざ外に出て運動をしようという人はいない。それが示すのはインフルエンザは飛沫感染であるため人が多く集まる場所でのが現代で人がたくさん集まる場所といえば人気バンドのライブ会場ぐらいなものだ。かと言ってここにいる人がライブに行くような若い世代の人ばっかりではなく各世代まんべんなくいる。ここまでの大流行は本当に珍しい。そんなことをぼんやりと思っていると仕事が終わった。  夜勤帯の人に引き継ぎをしてから帰る頃にpetに政府から連絡が入った。「インフルエンザの大流行につき医療従事者の皆様の生活行動の一部をpetにみはらせ、義務化します。ご了承くださいますようよろしくお願いします」そんな内容の面白みもない文章が表示されていてため息をつく。 『インフルエンザによる被害を少しでも抑えることが目的です。月乃様のお体を護るためにも何卒理解をお願いしたく存じあげます。』 「知ってるよ。きちんとやるから。」  少しそっけなくなってしまうのは仕事で疲れているのもそうだが口うるさい政府の対応に苛ついてるのもある。  街に出るともうすでに電光掲示板はインフルエンザの大流行を伝え、予防を呼びかけていた。
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