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カーボンの腰あてをウエストへと巻きつけて、固定ベルトの金具をワイヤーの付いたフックと結合させた。
カチッと金属の音がするのを耳で確認して、フックに連結されたワイヤーを両手で力いっぱい引いて、結合部分に不具合がないかどうかを確認する。
破損があれば、地上10Mの位置から、彼らは落下する。
もしくはワイヤーに引っかかって宙吊りのまま、救助が来るまで脳に血が溜まっていくトリップ感覚を堪能することとなる。
「よし、問題なし」
言葉を発してチェックを入れ、仕込んだ装置が観客から見えないように、ジャケットを羽織らせる。
ベルクロで裾がずれないようにしっかりと押さえつけたあと、頭に取りつけたヘッドセットのマイクチェックをテクニカルから受け、ようやく舞台袖へと送り出した。
ほっと息を吐く間も無く、ダンサーが私の前に立つ。
再び、同じ作業を繰り返しては、ダンサーを送り出す。
目を焼くほどに眩いライトと、それに負けないほどに期待に満ちた瞳をもつ観客が待つステージへ、彼らは駆けて行く。
ここは "show-space(ショースペース)"
前人未到のショーを観せる場所だ。
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