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簡易的に安全ピンで止めるだけでも、支障は無いレベルではあったが、5分もあれば直せるものなら、直してしまうほうが後々の仕事が山にならずに済む。
既に先ほど怪我をし、出血をしたダンサーの鮮血がこびりついたままのチュチュとブーツは、放置したままだ。
裏手にまで響く音楽と観客の歓声をBGMがわりにして、縫い物を勤しむ。
わっと歓声が湧く。
その声に呼応するように、顔を上げた。
この時間帯ならBMXのパフォーマンス中だ。
ステージ上を縦横無尽に走るBMXが、ステージと観客を繋ぐ中央のレールの上を駆け抜け、一回転を披露する。
なんともアクロバティックで危険なショー。けれどもそれを観客は望んでいる。
「ほんと怪我だけはしないでよね」
心からの祈りを込めて、呟いた。
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