番号一.「成程喃。じゃあ、殺せば?」

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番号一.「成程喃。じゃあ、殺せば?」

 世界とは、案外脆い。それを実感したのは。セカイが15歳の時だった。  今でさえ英雄も度肝を抜かれるような『事』と戦い続けてきた彼女だが、しかしそんな彼女もその頃は一般的な学生だったのである。別に何てことは無い、高校生。嗚呼懐かしき学生時代。学友と楽しくお喋りをして、気が付けば教室に予鈴のチャイムが鳴り響く。急いで自分の席に座り、ぼうっと授業を受けて……そういう時期がセカイにもあったのだ。  けれど悲しいことに、それは終わってしまったのだった。  深くは語るまい。  ただ――世界は滅びた。  それは何の前兆もなかった。  前触れもなく、唐突に、まるで急に電源が落とされたかのように――プツリと、景色が消え失せた。  それがセカイの目撃した世界の終焉である。  原因はわからない。気が付いたら景色が消え失せて、そしてセカイの意識も釣られておちたのだ。目覚めると、景色は確かに存在していたが、しかしそれはただの荒野。こんなものを見ても面白くもなんともない。セカイは仏頂面でいた。はて、そういえば夢を見たような気がするが、しかし所詮夢だから思い出せるわけもなく、セカイは途方に暮れていた。  そこに、世界が滅びてから初めての『事』が起きた。  地平線の彼方から何かがやってきているのが見えたのである。  砂煙を上げて、異常に素早く、その『事』はすぐ目の前までやってきた。 「私は≪始まり≫。さあ倒してみるんだなあ!」  クッハッハ、なんて、行き成り笑い声を上げる始末。はてさて、一体これは何なのだろうか。何の冗談だろうか。  目の前に真っ白な少女が居た。  真っ白な腰まで届く髪の毛に、真っ白な何の飾りもないワンピース。肌も白いし、目も白い。セカイはまるで見たことのない人種の少女を目の当たりにしてしばし呆けてしまった。
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