インフル翔君のお熱な1日(前編)

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「戻ってきたか」 次に網膜に飛び込んできたのは、見覚えのある白い天井だった。 だらりとベットからはみ出した重い腕を、俺は額まで吊り上げる。 閉じられた瞼の上から腕の重みがずっしり伝ってきた。 「ふぅ~」 乾燥した空気が喉に張り付くのを我慢しながら、大きく胸を膨らませた。 腹の辺りが何かに乗られているかのように重くだるい。 起き上がろうとしても体が鉛になったみたいで、まったく動こうとしなかった。 朝は平熱だったし、食欲もあったのに、体が言うことを聞いてくれないというのはなんだか妙に切ない気分だった。 「静かだな」 自分以外の声がしない平日の家に、俺の声がしーんとしみ込んでなくなった。 母さん、どっかに出かけてるみたいだな。 眠りに着く前にいた母さんの気配さえ、この家にはすでにありはしなかった。 父さんも会社、瑞姫も学校。 病気の時ひとりで過ごすのは心細いとは聞いたことがあったけど、やっとその意味を理解できた。 いつだって、どんなときだって一緒に居たあいつでさえ、今は隣に居ないのだ。
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