インフル翔君のお熱な1日(前編)

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「そういや、暫く連絡取ってないや」 枕の下、携帯の硬い感触を感じながら、俺はふと思った。 たしか、俺がインフルになってから、まだ1度も連絡していない。 『‥‥‥翔』 暗い瞼の裏に浮かび上がるそいつの幻想が、俺の名前を呼びかける。 俺の幻想の中のそいつは、なんだか寂しそうに表情を曇らせていた。 どうして俺の中のこいつは、こんな顔をしているのだろうか。 もう2度とさせたくないと誓ったその表情を。 『‥‥‥翔』 俺の名前を口にしながら、そいつは真っ暗闇に段々消えていく。 俺は懸命に追いかけようとするも、結局はそいつは闇の中へとけてしまった。 『‥‥‥翔』 夢とも現とも分からない、暗闇の中で誰とも知れない声がひたすらに俺を呼ぶ。 「‥‥‥翔」 というかよく耳を済ませば、それは現実世界から聞こえてくるようであった。 家には誰も居ないはずなのだが。 俺もそろそろ末期らしい。 死ぬのだろうか俺は。まあ死因がインフルエンザ、と言うのも笑い話ぐらいにはなるかもしれない。
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