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「それが、どうしたんだよ」
「だから、昔は男の子の身体だった。だけど、私は女だって事が分かってくれたでしょ」
「性同一性障害の事は、何となく知ってたよ。俺が言いたいのは、何で言わなかったかって事だろ」
勝也は立ち上がって、私を見下ろすみたいにして大声で怒鳴った。
それを言われるのは、分かってた。
どんなに女だって主張したって、それを隠してた事実は拭い去れない。
それが、嘘をついてたって事になる。
確かに、後ろめたい気持ちもある。
嘘だと言われたらその通り。だけど、元性同一性障害者の気持ちからしたら、絶対に言えるはずなんて無かった。
嘘をついてまで付き合いたかったのは、勝也が好きだったから。
「言ったら……」
「何だよ、愛美」
「言ったら、付き合ってくれた。前に男の子の身体だったとしても、私の事を好きになってくれた?」
「それは……」
やっぱり、偏見だ。
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