216人が本棚に入れています
本棚に追加
どっちも、違う気がした。
店長が欲しい言葉は、ひとつしか無いってすぐに分かる。今まで何度も、自分の意思とは関係なく発して来た。
その言葉を、要求されてるんだ。
ワタシガ ココカライナクナル。
「店長。私、辞めた方がいいんですか?」
精一杯の抵抗だった。
私の考え過ぎで、店長に状況の説明を望んでる。ちゃんと説明するチャンスを、貰う為の言葉だった。
「いや、うちとしても急に人手が減るのは厳しいが、雰囲気と言うのもあるしね。花咲くんが、そう考えてるなら仕方ないか」
「えっ、ちょっと……」
私は、職を失った。
店長に根掘り葉掘り聞かれるよりは、何倍もマシだった。だけど辞めさせられるなんて、少しも思ってなかった。
性同一性障害だった事は、そんなに悪い事なの?
仕事まで、奪われなきゃいけないくらい特別な事なの?
更衣室に入って私物を片付けてると、一番仲がいい女の子が入ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!