216人が本棚に入れています
本棚に追加
私が何を言ったって、信じる訳が無い。
それに、もうバイトを辞めるって言っちゃったし。
たまたま大きな紙袋があって、ロッカー内の私物はひとまとめに出来た。少し重たいけど、引きずる程じゃない。
「もう、帰る……」
仲の良い娘に、それだけ言って店の裏口から外に出た。
この娘だって、勝也の言った事をある程度は信じてる。そう思ってしまう自分が嫌になる。
誰にも見送られないで、店を出ていくなんて思わなかった。
「そうだ、DVD返さなきゃ……」
バイトの帰りに寄って返そうと思ってたDVDを、こんな時間に返す事になるなんて予定外でしかない。
返却カウンターでDVDを返して、別のDVDを借りるために店内の棚を巡ってみた。
「あっ、これ見たかったんだ」
話題の、ヒーローモノの映画だった。
でも、手にとれない。勝也も、見たいって言ってた映画だったから。
最初のコメントを投稿しよう!