第一章 大失恋のその後で

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             2    ふとした事で勝也との思い出の全てが蘇り、別れた時の辛さがぶり返してくる。  これは、単純な失恋じゃ無かった。  性同一性障害者だった事への差別と、恋心を踏みにじられたダブルパンチ。  最初は、差別の方が辛かった気がする。 「勝也……」  今は、どっちが辛いのかが分からなくなってる。  失恋の悲しさと、差別の悔しさ。  女の子としては悲しいし、人間としては悔しかったのかもしれない。  その時、今まで聞いたことないくらい、大きな音でお腹が鳴った。悔しくても悲しくても、何十時間もほとんど食べなかったら、流石にお腹は減っちゃう。  一時は餓死しても良いって、無意識に思ってたのかもしれない。 「何か食べようかな……」  キッチンに立っても、空腹なのに食欲はあまり無い。  断食みたいな状態だったから、胃だって食べ物を受け付ける状態じゃ無いかもしれないな。
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