第一章 大失恋のその後で

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   進展しない理由のもうひとつに、勝也のバンド活動があった。  なるべく一緒にいたいから、バイトのシフトは同じ日・同じ時間に入れてた。  大体は、昼から夜の八時か九時まで。  何もなければバイトの後にデート出来てたけど、週に三日はバンドの練習があった。  その事が不満であり、不安だった。  それは、バンドの練習やライブに、一度も呼ばれなかったから。  普通バンドしてたら、彼女には一番見せたいんじゃないかって思いそう。だけど、勝也は絶対ってくらいに見せたがらなかった。 「ねぇ、練習見に行きたいよ」 「その内な。メンバーが変わったばっかで、見せられる状態じゃないんだ。前にも言ったろ」 「そうだけど……」  私にとって勝也のバンド活動は、唯一知らないシークレットな部分。  もしかして、バンドなんてしてないんじゃないの?  そんな事を、何度か考えたりもした。
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