オレの家に招いたせいでテンパっているのか、
「あ、あの。加賀見さんの会社の部下の藍井です。突然の事で手土産も持たずに失礼しました」
姉の所まで案内してくれている、古参のメイドにあたふたと挨拶している。
オレの物心つく前から、代々ウチに仕えてくれているメイド頭は、
藍井の挨拶に驚いたものの、
「私どもにまでそのようにご挨拶下さるなんて、恐れ入ります」
ゆったりと笑った。
連れてきた客人で、こんな『普通』の挨拶をしたのは藍井が初めてだ。
みな使用人は目に入らないようで、彼らに挨拶する輩(ヤカラ)などほとんどいない。
あとでこのメイド頭が、
「親御さんの躾の良い方ですね。今どき珍しいくらい礼儀の行き届いたお嬢様です」
藍井をベタ褒めしていた。
メイド頭の情報は瞬く間に屋敷内の使用人に、広まる。
得てして彼女は、加賀見家の使用人から好印象を得る事になるのだが。
彼女には何の関係も無い事だ。
「坊ちゃまも、ああいう方を早くお嫁さんにお迎え下さいまし」
最近とみに耳に痛い、お説教を喰らう羽目に、
なったけど。
姉と対面した藍井は、先ほどの挨拶を繰り返し、
仁王立ちする姉の姿をうっとりと見つめ。
「・・・綺麗なヒト」
なんて呟くもんだから。
「じゃ、アンタ出ていきなさい」
すっかり姉に気に入られてしまったようだ。
「・・・姉さんと2人きりにする訳には」
反論するも、
「アタシはこのコが気に入ったの。だからアンタ、邪魔」
キッパリ言い切られ、あげく、
「あ・・・このコの着替え覗く気ネ!」
オレを指さし、ケケケと笑った。
ウチの姉は、ハッキリ言って品が無い。
初心(ウブ)な藍井が毒されないかと心配するが、
何だかんだで結局、部屋の外に出されてしまった。
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