~第一章 カレジ~

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突然、ふわっと体が軽くなったかと思うと、カレジは地面に降ろされた。 「いいか?母さんと逃げられるところまで、逃げるんだ。ここは、できるだけ父さんが食い止める。いいな。」 カレジは、首を思いっ切り横に振った。 「……嫌だよ!!」 涙でのどがつまって、うまく喋れない。 「敵が増える前に、早く!!さあ、行くんだ!!」 父の前には五人もの兵士が立ちふさがっている。 一人では、厳しい。 ためらっていると、グイッと腕を引っ張られた。 「母さん…!」 母は既に後ろを向いていて、表情は見えない。 「逃げましょう。……カレジ。生きるのよ!!」 母に手を引かれ、カレジは走り出した。 兵士たちが笑いながら話かけてくる。 「どうせすぐに追い付いてやるよ。この親父を殺した後でな。今のうちだけ、鬼ごっこを楽しんでこい!」 ―クソッ!!― 自分には何もできないのか? カレジは何度も振り返りながら、父の逞しい背中が遠ざかっていくのを見た。
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