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突然、ふわっと体が軽くなったかと思うと、カレジは地面に降ろされた。
「いいか?母さんと逃げられるところまで、逃げるんだ。ここは、できるだけ父さんが食い止める。いいな。」
カレジは、首を思いっ切り横に振った。
「……嫌だよ!!」
涙でのどがつまって、うまく喋れない。
「敵が増える前に、早く!!さあ、行くんだ!!」
父の前には五人もの兵士が立ちふさがっている。
一人では、厳しい。
ためらっていると、グイッと腕を引っ張られた。
「母さん…!」
母は既に後ろを向いていて、表情は見えない。
「逃げましょう。……カレジ。生きるのよ!!」
母に手を引かれ、カレジは走り出した。
兵士たちが笑いながら話かけてくる。
「どうせすぐに追い付いてやるよ。この親父を殺した後でな。今のうちだけ、鬼ごっこを楽しんでこい!」
―クソッ!!―
自分には何もできないのか?
カレジは何度も振り返りながら、父の逞しい背中が遠ざかっていくのを見た。
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