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次に目が覚めたのは、肉の焼ける、良い匂いがした時だった。
レンがどこからか調達したのか、肉に火をかけていた。
「…起きたか。腹が減っているだろう?」
そう言われて、カレジは無言で頷いた。
昨日よりも、体が軽くなっていたので、ゆっくりと起き上がることができた。
よく見ると、体中の怪我をしている部分に、薬草を当てて、布で巻き付けてくれていた。
「…レン。ありがとう。」
勇気を振り絞って、声を発した。
相変わらず、レンは無表情だった。
「…何がだ。」
感謝の言葉の意味が伝わっておらず、カレジは焦った。
「えっと、傷の手当てとか、食べ物とか…」
「…どうという事でもない。」
「あ、でも、俺にとっては、すごく嬉しいことだし、おかげで命も助かったし…。父さんにも、感謝を感じたら相手にも言葉で伝えろって、いつも言われてたし。俺は、レンに感謝してるんだ。」
「…そうか。良い父親を持ったのだな。」
そう言うと、レンは、優しくカレジの頭を撫でた。
やっぱりレンは無表情だったが、でも、心のあったかい人だというのが分かった。
レンの温かさに触れ、カレジは自然に涙が溢れていた。
「…何を泣いている?…さあ、食え。」
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