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しばらく経ったある日のことだった。
「…もう跡形もないと思うが…。一度、お前の村に戻ってみるか?」
突然、レンが口にした言葉にギクッとした。
忘れようとした、忘れられないこと。
「…うん。行ってみる。」
きっと、もう誰もいない。
森を30分も歩くと、村のあった場所に辿り着いた。
考えていた以上に、村はボロボロだった。あの時の爆発のせいだろう。村の半分は地面がえぐり取られていて、何も残っていなかった。
二週間以上経った今も、血と、人の焼けた臭いが残っている。カレジは吐きそうになるのをこらえた。
レンが、持っていた荷物から、布を取り出し、カレジの鼻から口元に巻き付けて、覆い隠してくれた。
レンとカレジは、無言のまま、穴を掘り、一人一人の墓をこしらえた。
敵も味方も分からない姿だった。
父と母の姿も探したが、大きな爆発の威力で、村も森も人々も、元の原型を留めていなかった。
そのまま、逃げてしまいたかった。
でも、それではいけないと思った。
村は、墓だらけになった…。
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