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夕暮れ時。
少し小高い丘に登って、村を見下ろしながら、二人は休息を取っていた。
「あの地面がへこんで何もない所。あの辺に、俺達の家があったんだよ。庭も、畑もあった。……何もなくなっちゃった。…誰も、笑ってない。ずっとずっと、幸せに暮らしたかったのに…。」
レンが、カレジの背中を優しくさすってくれた。
「…攻めてきたのはタート国だと言っていたな。旅の途中で、奴らの噂を聞いたことがある。魔法の研究をしていて、大きな力で他の国をねじ伏せようとしていると。この村でも、その魔法の力を使ったのだろう…。敵も味方も関係なく巻き添えにして…。…なんて卑劣な…。」
レンが怒ってくれているのが分かった。
「…辛かっただろう。」
そう言って、レンはカレジを抱き締めてやった。
我慢していた涙が溢れてきた。
涙は拭っても拭っても、いつまで経っても止まらなかった。
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