第5話

9/9
前へ
/9ページ
次へ
 一閃。  僕の顔の斜め下、見上げる瞳と視線がぶつかった。 「アゲ、ハ…?」  轟音。  実行し始めてからずっと、気にしないようにしていたことがあった。  でも。  それが急に気になりだした。  アゲハに有無を言わさず始めたこの試みだけど…。  ――僕は、さっきから、どんな顔をアゲハに向けてるんだろう。    不安が一気に濃くなった。  また一閃。  差し込む青い光。一瞬見えたアゲハの顔は、今にも泣き出しそうだった。  地面が割れるような音が続く。 「ごめん――」  辛うじて発した声は、掠れていた。  ごめん。  ごめん、アゲハ。そんな顔させたかったわけじゃないんだ。ただ、アゲハを蝶に戻したかっただけなんだ。  それが、アゲハにとって一番いいことなんだと、思って。  だから、僕は―――。  見なくてもわかる。  僕は今、すごく情けない顔をしている。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加