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「あめ、ひどくなってきたね」
アゲハは、カーテンの隙間から薄暗い外を見ながら呟いた。
僕は、そうだねと返事をしながら、アゲハの傍までやってきて、同じように外に目をやった。
つけているテレビは、夕方のニュースを映していた。この辺りとさほど変わらない、激しい雨と雷の鳴る東京都心の様子を、カッパを着たアナウンサーがほとんど叫びながら伝えている。
僕は今日も、乏しい愛想を振りまきつつも、先日のような不手際もなく、無事に喫茶店を後にした。
夕方五時半。
結構強い風が吹いていたけど、とにかく蒸し暑かった。
空はまだまだ青くて、でも、厚い灰色の雲が視界の隅に入っていたのを覚えている。
喫茶店近くのスーパーで買い物を終え、アパートに向けて自転車を走らせていたら、頬に冷たいものがあたった。
服とアスファルトにシミを付けだしたから、すぐにそれが雨だとわかった。
そして、アパートに着いた直後、雨音は一気に加速した。幸い僕は、少し濡れただけで済んだ。
部屋に入り、タオルで身体を拭きつつカーテンから外を見る。
時々地響きのように鳴る雷に怯えるアゲハに大丈夫だよと声をかけつつも、僕は、この天気を心の中では歓迎していた。
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