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のんびりと食事を終えた今も雨と雷は健在だ。
外は、厚い雨雲のせいで暗くなっている。この雨雲が留まっているうちに実行しなくちゃ。
僕は内心、ヨシと気合を入れた。
流しに運んだ食器を水につけて部屋に戻ると、アゲハの意識はテレビに向かっていた。
「アゲハ」
「なに?」
「アゲハが人間になったときのこと、覚えてる?」
「え…?」
「今日みたいに、雨がすごくて雷が鳴ってたよね……」
「……うん」
「落雷で停電して、部屋は暗くて。テレビも消えてたから雨音と雷の音しか聞こえなかった…」
「……うん」
アゲハの視線が僕に向く。
もう、意識はテレビから僕に移ったようだ。
「……どうしたの、かいと?」
「僕、アゲハを蝶に戻したいんだ」
しっかりと間をあけて、ゆっくり口にする。
脳裏に、ネットで調べたウェブページが浮かんだ。
そのサイトは、飼育方法だけじゃなく、寿命についても教えてくれた。
羽化したアゲハ蝶の寿命が、約三週間だということを。
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