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音源は雨音と雷鳴。光源は時折差し込む稲光。
窓の近くに街灯がないのが、こんなときに役立つとは思わなかった。おかげで、足元がほとんど見えない。
手探りでリモコンをテーブルに置き、その手でアゲハの手を取って、立たせる。
「かいと……」
ゆっくりとアゲハを誘導して、僕たちは窓の前で少し距離を取って向かい合った。
そのとき、外から青い光が差し込んだ。
その光の強さに僕は少し目を細めた。
確か、こんなに光は入らなかったはずだ。そう思い、僕はカーテンを少し閉めた。
直後、雷鳴が響いた。
「アゲハ。蝶に戻りたいって強く思ってみて」
「……」
「あ、蝶に戻っても、雨が止んでから外に出すから安心していいよ」
「!? ……」
「ゆっくりでいいよ。焦らなくていいから」
アゲハが何も言わないから、何だか暗闇に向かって独り言を言っている気になる。けど、時折差し込む稲光が、アゲハの存在を知らせてくれる。
僕を見上げていないから、表情まではわからないけど。
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